333discs

憩いのひととき

●おやこでおでかけ

子どもが成長するにつれて、どんどん増えるおもちゃの山。まだ古くないし思い出もあって捨てるには忍びない、でも収納スペースは限られている…悩みの種ですよね。親が望む理想のおもちゃとはどんな物でしょう?欲張りな私の理想は、「色々な遊び方ができ、飽きずに長く遊べて、かさばらない。あわよくば知育にもよさそうなおもちゃ」!

そんな要望に今現在応えてくれているおもちゃ、それはコクヨの「ワミー」という名の不思議な形の柔らかいブロック(なんと、おせちの「ねじりこんにゃく」から発想を得たとか)。基本色の他に女子が好きそうなパステルカラーやラメカラー、蓄光カラーもあって選び放題。長ーい線路を作ったり、帽子やバッグにしたり。水遊びやしゃぼん玉にも活用できます。旅行時にジップロック袋に入れて持っていくと、移動中にもしばらく集中して遊んでくれるので助かっています。ボールにすれば赤ちゃんでも遊べますし、我が家の娘の場合、2歳後半から自分で組み立てられるようになりました。

書店の絵本売り場に置いてあったりするので、見かけたら是非試してみて下さい。大人もはまりますよ!

 

岩崎一絵
当ウェブマガジン編集担当。北海道出身。3歳児の育児奮闘中。




●パリの街角から

水の都、アヌシー

こんにちは、フルール ド クールの阿部桂太郎でございます。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。

昨年のクリスマス休暇に、フランスとスイスとの国境近くにある、アヌシー(Annecy)の町に行ってきました。
何か目的があったわけではないのですが、小さな子どもと一緒でも出かけやすく、また、大自然の中でのんびり過ごしたいと思ったからです。

なお、アヌシーという町の名前は、日本にお住いの方々にはあまり馴染みがないかも知れません。
しかし、1992年の冬季オリンピックの開催地アルベールビルや、スイスのレマン湖畔にあるジュネーヴの近くと言えば、何となく、その美しい町の様子を想像していただけるのではないでしょうか。

アヌシーの人口は約5万人。ヨーロッパで最も透明度が高いといわれるアヌシー湖のほとりにあります。
また、湖の周りにはフレンチ アルプスの山々が連なり、そこに降った雨や雪が清流となってアヌシー湖に注ぎます。

さらにその湖水はアヌシーの町の中にも引き込まれ、清らかな流れと心地良い音となって、訪れた人々を楽しませてくれます。
これが、水の都アヌシーと呼ばれる所以(ゆえん)です。

なお、アヌシーの旧市街地は約2キロ四方。決して大きいとは言えません。
しかし逆に言えば、のんびりとお散歩を楽しむのにはちょうど良い大きさ。細い路地が縦横に伸び、その中を清らかな水が流れるその様は、本当に美しいものです。

さらにアヌシー湖のほとりには、タロワール(Talloires)やデュアン(Duingt)などの小さな村々も点在しています。
私くしが訪ねた時には季節外れでひっそりと静まり返っていましたが、まるでどこかの観光局のポスターのように美しい風景が広がっていました。

皆さまも機会がございましたら、是非、水の都アヌシーやその周りに点在する美しい村々を訪ねてみてください。

・アヌシー湖の観光サイト
http://www.lac-annecy.com/

今回は、フランスの水の都、アヌシーについて、少しだけお話をいたしました。

・写真01(左上) アヌシーの旧市街地。町のあちらこちらに清らかな水が流れる。
・写真 02(右上) 湖畔の村、デュアンにて。セザンヌが描いた古城がいまも佇む。
・写真 03(左下) アヌシー湖の白鳥。透き通った水面を気持ち良さそうに泳ぐ。
・写真 04(右下) アヌシー湖、冬の夕暮れ。すべての音が吸い込まれたような静けさ。

 

 

阿部桂太郎

1965年8月22日生まれ。新潟県小千谷市出身。2003年よりフランス、パリ在住。インターネットショップ「フルール ド クール」を営む。好きなことは、旅をすること、食べること、温泉に入ること。




●国立の街角から

「一橋大学」

真冬に一橋大学の前を通ると、ひと際ひんやりした空気が流れてくるような気がする。最近知ったのだが、敷地内に武蔵野の原生林を残しているというのも納得だ。ひょっこりタヌキの親子が出てきたことも。
キャンパスに足を踏み入れると、ふっと懐かしいような気持ちになる。古いレンガ造りの校舎は、私が通った大学とどこか似ている雰囲気があるかもしれない。天気のよい日は子どもたちの遊び場になったり、近所の人が散歩している姿もよく見られる。こういうところは、都心の大学には見られない光景だと思う。
写真は、築地本願寺や湯島聖堂などを手がけた伊東忠太設計の兼松講堂(1927年)。

 

葉田いづみ
グラフィック・デザイナー。主に書籍のデザインを手がける。静岡県出身。2009年より国立に暮らす。




●西荻の街角から〜トウキョウエコノミー

世界に一つだけじゃないサウダーヂ

文責:三品輝起

 

年始なので心をいれかえてまじめに(なのでBGMは「世界に一つだけの花」でお願いします)。

 

(……もーともーととーくべーつなオンリーワン……)

 

去年もっとも印象に残った映画の1つに、富田克也監督の『サウダーヂ』というのがある。舞台は日本中にある空洞化した不景気な地方都市……ショッピングモール、パチンコ店、駅前商店街のシャッター通り、ゴーストタウン化した歓楽街。まあ旅行するたびに出会う、判で押したようなの風景だ。

 

そして、その街に生き、ばらばらにほどけてしまった者たち……失業者、悪徳業者、介護老人、過酷な肉体労働者、ヒップホップを歌う若者、ラブアンドピースな若者、東京帰りの若者、冷笑する若者、インターネット上の極端に国粋的な若者、ブラジル人やタイ人といった外国人労働者、彼らのコミュニティと地元民との軋轢。

 

そのすべてが混在した剥きだしの社会を、上映時間3時間という壮大なエンターテイメントとしてまとめあげている。とりわけ出口のない移民問題をこれほどおもしろく、リアルに描ける監督は他にいないだろう。

 

(……どーれもーみんなきーれいーだねー……)

 

移出民、移入民をあわせた移民問題というのは、グローバル化した世界において、すべての国が直面している課題である。植民地政策をとってきたヨーロッパの国々も戦後、おもに北アフリカをふくむイスラム圏からの移民が増え、排斥と暴動、そして開かれた対話をいくどとなく繰り返し、いまなお努力している。

 

それにくらべ日本は、先進国でもっとも移民政策が遅れている国であることは言を俟たない。現在、日本における外国人登録者数は約200万人、そのうちいわゆる外国人労働者は100万人だ。

 

要約して書くと、政府の(そしてみなが暗黙に了解している)方針はこうだ。正規のルートでは、単純労働者の流入はおさえて、知的労働者の入国だけを望んでいる。よって不法労働者に対してはかなり厳格な基準で取り締まっている。

 

とはいえ一部の製造業や農業において、もはや低賃金の単純労働者なしでは経済が回らない構造があるのはあきらかなので、別のルート(外国人研修制度や、90年の入管法の改正による、日系3世とその家族の定住をうながす措置など)で調整を進めている……といった具合だ。

 

(……いっしょーけんめーになればいい……)

 

去年の下半期は、震災と原発事故後というタイミングもあり、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の議論がすごーく白熱してた。我々の社会は、変わらなければならないという焦りと、このまま変わらずにいたいという心性の狭間で、不安定に揺れていた(と記憶しているけど、あれ? だいぶ忘れちゃったなあ)。

 

移民の問題はどうだろう。文化摩擦や不就学の増加など、社会の分断が忍びよってるのに、もはや彼らなしに立ちゆかない現状があるのに、日本人の多くは見てみぬフリをしてるように思える。でも。こりゃTPPなんかより何倍も何倍も難しい問題だ。

 

長らく同質性をベースとしてきた社会のなかで、伝統や文化の維持をふくむローカリズムの流れと、職を求める人々が豊かな国の境界線を自由にめざす流れは両立するのだろうか? するとすれば、どんな形だろう。ぼくは彼らと、どんなサウダージが共有できるだろう。

 

(……そーさーぼくーらもー……)

 

BGMうるさいよ! ……まあ言いたかったことは、本作がそんな頭の痛い連立方程式に、フタをしないための強力な案内人となるんじゃないかな、ってことだ。けっこう笑えますし。うーん、いつもとくらべてまじめすぎたような……ではではチョークディー!

 

 

三品輝起(みしなてるおき)

79年生まれ、愛媛県出身。05年より西荻窪にて器と雑貨の店FALL (フォール)を経営。また経済誌、その他でライター業もしている。音楽活動では『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -tribute-』(commmons × 333DISCS) などに参加。2011年7月、アルバム『LONG DAY』(Loule)を発表。




●乙女歌謡

ミュージック・ジャーナル

2月18日、等々力にある「巣巣」さんで、~ミュージック・ジャーナル vol.2 「松本隆 ソングブック」~というイベントを、ミュージシャンのHARCOさんとともに開催いたします。昨年の9月にvol.1を開催したのですが、そちらが楽しく、好評でもあったので、今回は「松本隆さん作詞の歌のみに限定して、歌とおはなしをおこないます。

 

イベント自体を前半と後半ではなく、A面/B面と区切り、私が女性視点で選んだ歌をA面、HARCOさんが男性視点で選んだ歌をB面で聴いていただく予定です。すでに私は、候補の10曲をHARCOさんにお伝えしているのですが、どんな歌が勢揃いするか私も今からとても楽しみ。

 

きちんと統計できているわけではありませんが、これまで私が紹介してきた「乙女歌謡」約200曲の、3分の1は、松本隆さんが作詞された歌ではないかと思うほど。松本隆さんがいらっしゃったから、子どもだった私は「歌謡曲」にひかれ、言葉や感情を覚えていきました。

 

音楽好きの方にとっては、言わずと知れたことですが、松本隆さんは作詞家として活躍される前、細野晴臣さん、大滝詠一さん、鈴木茂さんの4人で「はっぴいえんど」を結成されていました。そして解散後、南佳考、あがた森魚さんのアルバムをプロデュースし、アグネス・チャン「ポケットいっぱいの秘密」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」で作詞家としての人気を確立。その後、松田聖子さんはじめ、数々のアイドルに歌詞を提供しています。

 

今回、私が候補にあげている10曲中、7曲が女性が歌う歌で、残り3曲が男性です。このコーナーは「乙女歌謡」というタイトルですが、「乙女歌謡」の神さまのような松本隆さんが作詞された中でも、私が一番好きな、男性の歌をご紹介させていただこうと思います。

 

それは、はっぴいえんどの「朝」という冬の歌。今まで、いろいろなことから顔をそむけてひとりで生きてきた男性に、ともに朝を迎える女性が現れる。すぐ隣で眠る人を通じて、少しずつ優しさや穏やかな日常、あたりまえの幸せが、自分のものになっていく。短い歌詞の中にそれほど多くは語られていないけれど、ふたりの朝の風景が映画の一場面のように浮かんできます。大きな出会いも別れも描かれてはいないけれど、何気ない日常こそドラマチックであることを感じることができて、聴くたびに穏やかな気持ちになります。

 

ミュージック・ジャーナルは、「乙女歌謡」を基本に、これからもいろいろな音楽家の方と組んで、全国各地でイベントを開催できればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 

■ミュージック・ジャーナル vol.2 「松本隆 ソングブック」
出演:音楽/HARCO トーク&MC/甲斐みのり
日時:2012年2月18日(土) 18時30分開場 19時開演
会場:巣巣/東京都世田谷区等々力8-11-3 1F
電話 03-5760-7020
料金:3800円(dans la natureのお菓子、ドリンク付き)
企画協力:ミルブックス
http://www.susu.co.jp/news/p869.html

 

 

 

甲斐みのり

文筆家。1976年静岡生まれ。旅・お菓子・各地の食材・クラシックホテルや文化財の温泉宿などを主な題材に、女性が憧れ好むものについて書き綴る。http://www.loule.net/

 

 




●おやこでおでかけ

子どもとの外出時、かばんの中にちょっとしたおやつがあると安心ですよね。我が娘の離乳期の定番は赤ちゃんせんべいとバナナ、その後何でも食べられるようになると、小袋が数個連なったスナックをよく買っていました。手軽で便利なので今もお世話にはなりますが、いつもこういうおやつを食べさせるのも…と考えていた時に出合ったのが、なかしましほさんの『まいにちたべたい”ごはんのような”クッキーとビスケットの本』。オーブン予熱の間に生地が出来てしまうし、洗い物はボール一つ。ずぼらな私もすぐにはまってしまい、手作りクッキーを持ち歩くことが増えました。材料も工程もシンプルで、子どもと一緒に作るのも楽しいんです。雨や雪で外遊びが出来ない日の娯楽にもなりますし、周りのママ友でこの本を気に入らなかった人はいません。ちょうど同シリーズの新刊『クッキーとクラッカーの本』が出たばかりで、書店でも見つけやすいと思います(どちらを先に買っても大丈夫ですが、新刊の「クッキー作りの『困った!』相談室」を読むと失敗が減りますよ)。お菓子作りなんて面倒で…と敬遠されている方にこそ試していただきたいレシピです。

 

岩崎一絵
当ウェブマガジン編集担当。北海道出身。今月3歳になる娘の育児奮闘中。




●パリの街角から

「ワインと言えば…」

こんにちは、フルール ド クールの阿部桂太郎でございます。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。

先日、日本から知人がパリに来た時のこと、一緒にお酒を飲むことになりました。
まずは酒屋さんへ行ってワインを物色。続いては商店街を歩いて酒の肴を探します。

チーズ屋さんの前に差し掛かると、「チーズは私が買います」と言う知人。
ワインの代金を私くしが払ったので、チーズの代金は自分が…と気づかってくださったのでしょう。
しかし、その申し出を丁重にお断りして、隣りにあったシャルキュトリ(charcuterie:豚肉加工品店)で、ソーシソン セック(saucisson sec:サラミ)を買いました。

 

なお、ワインのつまみと言えばチーズ。
日本では、そんなふうにお思いの方も多いのではないでしょうか。
かくいう私くしも、日本にいた頃は、そう思っていました。

しかし、パリに来て、街にお酒を飲みに行ったり、友人と飲んだりする中で、必ずしも「ワインにチーズ」ではないことを知りました。

例えば、レストランでコース料理をいただく時にも、チーズが運ばれてくるのは主菜を食べ終えた後。
別な言い方をすれば、赤であれ、白であれ、ワインを飲み終える頃に出てきます。
もしもワインとチーズが本当に合うのなら、ワインと一緒に運ばれてくるとか、ワインの進み具合に合わせてチーズが出てきてもおかしくないはずです。

また、街中にある居酒屋さんに行っても、つまみの主流はハムやソーセージ、サラミなど。
チーズを置いているお店もありますが、それをつまみにワインを飲んでいる人は、あまり見かけません。

さらに、ワインの産地にある蔵元を訪ね、ご主人とワインを飲みながら郷土料理をいただいた時のこと。私くしが、ワインとチーズの相性について訪ねたら…、

「こればかりは人の好みだから、合わないとは言わない。でも、ワインもチーズも、それぞれに香りや味わい(コク)を楽しむものだから、お互いが主張し合うと(ぶつかると)合わないこともある。また、ワインとチーズを合わせる基本は、同じ産地のもの選ぶということだけれど、それでも合わないものは合わない。」…と。

 

かのナポレオンは、フランスのブルゴーニュ地方、ジュヴレ シャンベルタン(Gevrey Chambertin)の赤ワインと、同じブルゴーニュ地方のエポワス(Epoisses)というチーズがお好みであったとのこと。力強い味わいとして知られるワインと、「神の御み足の香り(イギリスでは、豚の足の指の間の臭い!)」と称されるチーズとの組み合わせは、何度試しても私くしは好きにはなれませんでした…。今回は、ワインとチーズについて、少しだけお話をいたしました。

 

 

阿部桂太郎

1965年8月22日生まれ。新潟県小千谷市出身。2003年よりフランス、パリ在住。インターネットショップ「フルール ド クール」を営む。好きなことは、旅をすること、食べること、温泉に入ること。




●国立の街角から

「大学通りのスターバックス」

 


スターバックスというのは本当に安定した人気があって、どの街でも混み合っている。しかし国立の大学通り沿いのスタバは、数ある店舗の中でも最も雰囲気と居心地のよいスタバのひとつではないかと思う。(だいぶひいき目に見ているかもしれないが。)ゆったりした店内からは外の緑がたっぷり見えて気持ちがいい。外にはウッドデッキのテラスが広がっていて、犬を連れた人々が一息ついている。電車で出かけて国立駅に戻り、あともう少し歩けば家に着くというのに、またふらりと立ち寄ってしまった。コーヒーのお供はシュガードーナツ。もちっとしていておいしい。

 

葉田いづみ
グラフィック・デザイナー。主に書籍のデザインを手がける。静岡県出身。2009年より国立に暮らす。




●西荻の街角から〜トウキョウエコノミー

東京本とモンドセレクションのゆくえ
(開発かコミュニティか、を乗り越えて)

 

文責:三品輝起

 

前口上から(読み飛ばしてください)。おマエ、西荻の街角からどうのこうの、という題名だけど、まったく西荻がでてこないじゃん。という声が聞こえてきたので、最近の村の印象を記すと、
・いろいろ不安もありグローバルなノマドとなるために閉店した自営店が数軒(ちょっとうらやましい)
・新しくできた自営店が数軒(なんだかうらやましい)
・ある日、地球(あるいはサン・ラ、本居宣長)レベルにまで徳が積みあがり、啓蒙主義的な自営店になっていたところが数軒(すばらしい)
・なぜかできてすぐ潰れた自営店が1軒(なんだかかなしい)
という感じで、合計すると相変わらず楽しいところだから、うちの店もがんばっていきたい(いまの夢はモンドセレクション。できれば金賞を受賞したい)といったところだ。

あとは、トーキョー何とかがどうのこうの、という題名だけど、おマエまったく東京がでてこないじゃんという声も聞こえてきたので、最近の東京について少し(「エコノミー」に関しては今回もまったくでてきません、すいません……)。

 

 

えー、いろいろと事情があって「東京」と名のつく本は、でるとすぐに買って読んでるのだが、震災以降もいくつか上梓されてる。売れてそうなものだと、6月にでた姜尚中トーキョー・ストレンジャー集英社(注1)、7月にでた建築家・隈研吾とジャーナリスト・清野由美による新・ムラ論TOKYO集英社新書(注2)などがあった。

東京本を3つにむりやり分類すると、
(1)アド街=泉麻人/東京人/ブラタモリ的な「文学系」
(2)どの街が伸びてどの街が衰退してる、どういう開発をすべき、といった日経/都市計画的な「経済学系」
(3)上記2冊もギリギリ入ると思われる「社会学系」
みたいな感じだろう。で、主に追っかけてきた(3)社会学系のお題目の一部分は、地震前でも後でもずっーと同じままだ。それはばらばらになってる社会の紐帯をどうするんだ、という話である。ただ震災後は「本気」で焦っているというだけだ。

でも一方で、都市論のなかで震災後にせりだしてきた論調もある。東京都が進めてる「天然ガス発電所プロジェクト」とか、港湾や河川の大規模な護岸工事、防災計画の抜本的な見直しとか、海岸部で壊滅した街を、高台を切り崩して移住させるタイプの復興計画とか、つまりお上が強く関与せざるをえない、ある意味では旧時代的な開発にいやおうなく注目が集まっている。また電力や水道といった、普段は湯水のごとく都民に供されてきた、インフラの脆弱性(と盤石性)にも気づかされた。オレに言われる必要もないでしょうが。

たとえば零年代に隈研吾氏を「丹下健三的」な大規模な都市計画を批判する「負ける建築」家として人々は拍手喝采で迎えたように、これからは脱権威的な下からの開発なんだという流れから、そういえば社会というのは景観やコミュニティがうんぬんという下からの動きだけ構築されてるんじゃなくて、上からの開発(優れたインフラストラクチャー)があったうえで成り立ってるんだった、という(当たり前の)ことが露顕しただけかもしれない。

だから上下の役割分担をきっちり認めあって、そうすれば両者をつなぐNPOやら地方分権やらの意義も自動的に導きだされるだろう、っていう議論もでてきている。なかにはその両方を止揚していこう、という大胆なアイデアだってあるようだ。9月にでた思想地図beta vol.2(コンテクチュアズ)という思想系のムック本にも、そういう話が載っている(注3)。でも長くなるので割愛する。

アメリカにはジェイン・ジェイコブズやリチャード・フロリダといった乗り越えるべき都市論の巨人がいて、最近では彼らを下敷きに(2)と(3)を縦横に行き来する著作がたくさんでてる(らしい。というのは古典以外読んだことがないので……いま必死で、鹿島出版会から4月にでたジェイコブズ対モーゼス(ニューヨーク都市計画をめぐる闘い)を読んでます)。これからは東京本にも、開発かコミュニティかを乗り越えようとする、含蓄のあるものがでてくるかもしれない。というわけで、再見っ(ツァイチェンッ)。

注1:『トーキョー・ストレンジャー』は、もう姜さんの顔写真載りすぎ(スナップが200枚はあるだろう、235ページなのに)。東大教授ミーツちい散歩、といった風情で、東京30カ所を巡る軽いエセー。

 

注2:『新・ムラ論TOKYO』では、下北沢、高円寺、秋葉原、最後は長野の小布施を2人で歩きながら、「人が安心して生きていける共同体のありかであり、多様な生き方と選択肢のよりどころとなる場所」と定義した「ムラ」を探していく。08年にでた『新・都市論TOKYO』の続編にあたる。この「都市論」と「ムラ論」は、それぞれ執筆された後に起こった、我々の社会の転換点ともいえる事件の予兆をはらんでいる。つまり、前作では8ヶ月後に起こるリーマンショックと世界経済の停滞を。そして今作では、未曾有の地震と津波、その後の原発事故によって奪われた「安心」という価値を。清野氏は「あとがき」で「都市を覆っているグローバリズムという経済至上システムのプレッシャーから逃れるべく、私たちは『ムラ』の可能性を探ろうと考えました」と書いているが、大人な隈氏がはっきりと、新自由主義のアンチテーゼとしてムラが語られる陳腐さも指摘しているあたりに、本書が凡百のコミュニティ本と一線を画してる要因がある。「自然との共生」といったキレイごとではなく、人々の欲望を肯定しつつ、かといって趣味趣向が合う者同士の狭いコミュニティを超え、なおかつ経済至上主義といったマジョリティではない多様な価値のよりどころ。言ってしまえば、本書はユートピア論だ。だが、その思考の射程は、震災後の我々にもちゃんと届いている。と思う。

 

注3:佐々木俊尚「震災復興とGov2.0、そしてプラットフォーム化する世界」。まだよく飲み込めてませんが「垂直統合するのではなく、復興をプラットフォームとして政府自治体が提供し、それらをモジュールである被災地と非被災地がそれぞれの方法で、有効活用することによって、それぞれの温度差をそのまま生かし、しかしそれぞれのアプローチで復興を目指していく」とのこと。うーん。

 

三品輝起(みしなてるおき)

79年生まれ、愛媛県出身。05年より西荻窪にて器と雑貨の店FALL (フォール)を経営。また経済誌、その他でライター業もしている。音楽活動では『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -tribute-』(commmons × 333DISCS) などに参加。今年7月、アルバム『LONG DAY』(Loule)を発表。

 




●乙女歌謡

こんにちは。甲斐みのりです。
333pressのこのコーナーでは、日本語の歌に限らず、自分の好きないろいろな音楽をご紹介させていただきます。

 

みなさん、好きな季節はいつですか?
私は、秋→夏→春→冬。単純に、寒がりだからなのですが。
つまりこれから、もっとも苦手な冬へと突入。
寒さのことを考えると、今からびくびくしてしまいます。
けれども嫌だ嫌だと思っていても来るものは来る。
仕方がないので、少しでも冬を快く過ごすため、
冬ごもりの準備をはじめています。
温かい洋服をまずごっそりと準備。
家が喫茶店かわりになるほどいろいろなお茶を揃え
おやつも絶やさないように。
そうしてベッドまわりには、お気に入りの本を積み上げ
冬の夜は早めにベッドにもぐりこみ、ポカポカ毛布にくるまれて、
読書しながら眠るのが好き。

 

そんな冬の夜によく聴いているのが、Margo Guryan「Take a picture」。
マーゴ・ガーヤンは、spanky & our gangのヒット曲「sunday mornin’」の作者。
そしてソロアルバムの中でも、ひとりsunday mornin’を歌っています。
ちょっとハスキーで、けれども甘く深い歌声。
なんとなく彼女の声は、春でも夏でも秋でもなく
ひんやりはりつめた空気の冬や、梅雨の季節に似合う気がして。
中でも私が好きなのが「Don’t  Go Away」という歌。
変拍子でリズムがくるくるかわるのが恰好よくて。
このアルバムを買ったのは大学生のこと。
つまりもう10年以上、毎冬ごと、聴き続けているのです。
ジャケットの写真もとてもすてき。
彼女のように寒い冬、くもりガラスの隙間から
外の風景を眺めるとき、寒い冬も悪くないと感じられる瞬間です。

 

甲斐みのり

文筆家。1976年静岡生まれ。旅・お菓子・各地の食材・クラシックホテルや文化財の温泉宿などを主な題材に、女性が憧れ好むものについて書き綴る。http://www.loule.net/

 




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